Shapingとは直訳すると、形作るという意味です。
今回は動物に行動を教え、行動を形作る方法についてお話します。
すでに起こっている行動の頻度増やす方法はすでにオペラント条件づけでお話しました。

行動する⇒強化する(好子を呈示する)⇒行動の頻度が増える でしたね?

では、一度も起こったことのない行動を動物にしてもらうにはどうすればいいでしょうか?



してもらいたい行動に少しでも近い行動をしたら
強化する
行動の頻度が増える
してもらいたい行動に前回より近い行動をしたら
強化する


を繰り返し、少しずつしてもらいたい行動に近づけていきます。

このようにして、してもらいたい行動に少しでも近い行動を強化しながら、少しずつ強化の基準をあげ、してもらいたい行動に近づけていくことをShaping(Successive approximation)といいます。


■□■ 例えば、犬に『お座り』を教える場合 ■□■


@ Scanning
[ 動物の行動を観察し、してもらいたい行動に少しでも近い行動が起きるのを待って強化する方法。]

犬の行動を観察し、犬がおしりをつけて座った時に強化する


ATargeting
[ 動物のある体の部分をトレーナーの手やターゲットと呼ばれる印に、タッチすることを教えて、少しずつしてもらいたい行動を誘導する方法。]

犬がトレーナーの手に犬の鼻をタッチしたら強化する
トレーナーの手を上に動かし、犬が鼻をトレーナーの手につけ自然と犬のおしりが下がったら強化する
次はトレーナーの手をもっと上に動かし、犬の鼻も上に動き自然と犬のおしりが地面についてお座りの状態になったら強化する


(トレーナーは自分の手に犬の鼻がついてくるのを利用して、犬の鼻をどの位置に動かせば、犬が自然とお座りの状態になるかを考えて誘導する)


BModeling
[ 動物にしてもらいたい行動を物理的に少しずつ作る方法。]

犬のおしりを触って強化する
犬のおしりを少し下に押して強化する
犬のおしりを押してお座りの状態をつくって強化する



CMimicry
[ 観察(模倣)学習といい、動物にしてもらいたい行動を見せて少しでも同じ行動をしたら強化する方法。]

すでにお座りを学習している犬のお座りの行動をみせて同じ行動をしたら強化する



などという方法があります。これらの方法とshapingの手続きを上手のつかえば、一度も起こった事のない行動も教えることができるのです。

@・Aの方法は小型、大型を問わず動物のトレーニングによく使われています。動物を無理やりという方法でないのでストレスもかかりにくいでしょう。

Bの方法では、小型動物は可能で、一般的によく使われているのを目にしますが、多少ストレスもかかるでしょうし、大型動物やイルカのような水中で生活をしている動物に使うのは難しいですね。

Cは動物の習性によっては、この方法では時間がかる場合や、学習できない場合もあるでしょう。バンドウイルカは模倣行動をよくしますので、実際にうちの施設でもこの方法で教えた行動があります。

Shapingには、強化のタイミングはもちろん重要ですが、行動の基準のあげ方など、知っておくとより上手にshapingにて動物の行動を作ることができるテクニックがあります。

次回はそのテクニックについて、実際に私の施設でのトレーニングの様子(@・Aの方法)をご覧頂ながらお話ししたいと思います。では、また次回お会いしましょう。

(千田 文子)